タライとハーマイ鬼と陽菜

モップガールの第7話で現地に向かおうとする谷原章介の頭にタライが落ちてくる。ナンセンス描写ではあるのだが、物語のクライマックスに向けて谷原章介の足止めをするという点では必然性があるのだ。このために北川景子が一人で殺人現場に向かいピンチに陥る。あとから判明する犯人は女性なので、ここで北川景子谷原章介が一緒に現場に向かったらピンチにはならないわけだ。もちろん、足止めには必然性はあるが、タライには何の必然性もない。このようにドラマには後の展開を盛り上げるためにターゲットとなる登場人物を一人にしなければならない都合がある。ラブストーリーなら、心がひかれながらも思いを打ち明けられない男女を雪の山小屋に閉じこめるとか*1。これがヒーロー物ならまちがいなく敵との決闘だ。
ハリーボッターの映画の1作目と2作目を以前に子どもと観に行った。3作目以降はどうなってるか知らんが、少なくとも2作目まではハーマイ鬼が最強の魔法使いである。ラストのボスとの戦いも、そこにハーマイ鬼がいたらハリーボッターの出番はない。そこで1作目も2作目もハーマイ鬼が参戦できないようなしかけがしてある。つまり、ハリーボッターは名門の出でありながら人間界で長く暮らした、いまはまだ未熟な魔法使い。物語の途中ではハーマイ鬼が助けてくれるが、最後のボスとの戦いはハリーボッターがその時点で自分ができることだけで戦わなければならない。この一連の作品、単なる流行でベストセラーになっているわけではない。
実写版セーラームーンでも同じような足止めはある。たとえば、act33冒頭の花妖魔との戦い。現場にマーキュリーとマーズが向かい最後はマーズと花妖魔のタイマンになる。ここで火傷を負わせられた花妖魔がact34まで2回に渡ってマーズを執拗に狙うわけだ。このとき、うさぎは熟睡していて起きられず、まことは自転車をひっくり返して参戦できない。これなどタライに近いものがある。だが、シリーズ中、最大の足止めはなんといってもact17だろう。体育館じゃなかった教会でマーズと妖魔が戦うがマーズの劣勢。見るに見かねた美奈子がマーズの目の前でシリーズ唯一のフルバージョンの変身をして*2、マーズを助ける。これが元で、レイと美奈子の確執が生まれ(実は美奈子が心を許す唯一の友人がレイになって)、レイだけが美奈子ヴィーナスの秘密を知ることになる。このレイと美奈子の物語はact47まで引っ張る実写版のメインストリームの一つと言ってよい。ここではどうしてもレイと美奈子の二人だけにしなければならなかった。うさぎ、亜美らには来て欲しくない*3。そのガジェットが陽菜である。
なんでうさぎが現場に駆けつけないんだと、○ちゃんねるが大荒れになったのを覚えてる。正確にはこれをきっかけにアニメ原理主義者たちが息を吹き返し、もはやこの板は見るに値しない物になってしまった。だが、以上に述べてきたような物語の構造、また職業軍人でもない月野うさぎ水野亜美らの*4行動原理を考えれば、まことに愚かな反論である。あれからもう3年以上が経ったし、アニメ原理主義者は私のブログなんか見てないと思うから言っておくぞ。

     おまえらにこの素晴らしいドラマの良さがわかってたまるか!

ああ、急に腹が立ってきた。明日もつづけるぞ

*1:そんなベタな展開は韓流ドラマにしかないが

*2:変身そのものにフルバージョンもショートバージョンもない

*3:「ら」って

*4:しつこいって