検証・これが実写版の台本だ!−act43(最終回)

最終回は日本中が涙したこのシーンだ。台本はほんとうに短いよ。たった4行。みなさんが監督ならこのシーンをどうやって撮りますか。放送はうさぎを斜め前から撮っているので、衛が消えたときに何か反応がないとおかしい。だから、一瞬「あっ」と驚いた表情になるわけだ。鈴村監督の演出、それに答えた沢井美優の演技、ともに素晴らしい。
別の撮り方。台本の3行目「うさぎが一人で残る」にある程度の時間が感じられる。砂浜に座って海を見ているうさぎと衛を後ろから撮る。衛の姿がだんだん薄くなって消える。うさぎは動かない。視聴者は、衛が消えたことをうさぎが気づいてないのではないかと思う。カットが変わって正面。右半分にうさぎ、左半分はさっきまで衛が占めていた空間。うさぎが微笑んでいる。こいつ、やっぱり衛が消えたことを知らないよと思う。うさぎのアップ。目に涙。いや、泣いてはいけないのか。
act43の検証は不調だったな。ほぼ台本どおりだったのもあるが、私がこの回に対する思い入れがないのが原因だ。以前にも書いたが、どうもうさぎと衛のラブストーリーの回が苦手で、act13、act15、act19〜20、act32も同様。このあたりの回の重要性を名古屋支部の再放送のレポで知ったくらいだ。もう2年半になろうというのに、これらの回に私がまったく言及していないことでお気づきだろうが。だが、ここを押さえておかないとシリーズ終盤が楽しめなくなるというのもわかった。
衛が命と引き替えにうさぎの元に来たのは、ダークキングダムにいることによって気づいたメタリア−幻の銀水晶−月野うさぎの関係を教えるためだ。そして、衛の教えを忠実に守り、うさぎは幻の銀水晶を押さえ込むことに成功する。act43以降、Pムーンは出現していない。さらにact46では自分の意志でPムーンになり、ヒーリング能力を使って大阪なるをはじめM妖魔の犠牲者を回復させることに成功する。亜美が言うようにact46の最後に出てきたのはうさぎちゃんだ。ただ、放送ではact42でもPムーンのうさぎちゃんを出しちゃったから、この流れがわかりにくいが。act46で銀水晶を完全にコントロールできたかに見えた月野うさぎだが、仲間からの疎外*1愛野美奈子の死、衛の死で、FinalActにおいて自制力が瓦解する。またたくまにPムーンに乗っ取られ地球の破滅を招く。これが最終回までの道筋か。
最後に、アニメでは見るのがやたらこっぱずかしかったうさぎと衛のラブストーリーだが、実写版ではact13からact36まで、なんと半年以上かけて忍耐強く近付けていったわけだ。実写で恋愛を描くのは意外に難しい。これがトレンディドラマなら仕事の後、食事をしてお酒を飲んで、つぎのカットでホテルで朝を迎えれば恋愛成立、ドラマの時間にして1分だ*2。こっちはなにしろ高校生と中学生だ。そんなシークエンスは使えない。そう考えると、照れないで見られる未成年どうしのラブストーリーとして良くできた脚本だと改めて思うのである。

*1:これを入れるべきか迷う

*2:そんなイージーな展開はいまどき少ないがな