「セーラーヴィーナス」愛野美奈子の蹉跌(最終回)〜最終回再考2006年版

うさぎと衛の恋は地球の破滅を招く。act35でゾイサイトのオルゴールを使って暴挙に出た愛野美奈子。だが、うさぎの一途な純愛に心を動かされ、オルゴールを壊し、クンツァイトの刃から二人を守る。愛野美奈子は任務に失敗したのではなく、地球の運命を変えることをこの二人に託して、自分は消えていったのだ。ここでシリーズ最後のプロセスをもう一度おさらいしよう。

     (1) 衛がクリンメタリアを体内に取り込むが、逆に身体を乗っ取られる

     (2) うさぎが衛の魂の導きによりエンディミオンの剣でメタリア衛を刺す

     (3) プリンセスセーラームーンにうさぎの身体が乗っ取られて地球を破壊

     (4) うさぎが衛の魂の導きによって幻の銀水晶の力で地球を再生

まず(1)だが、これは衛でないとできない。クインベリルに寵愛される衛でなければクインメタリアに近づくことは不可能。またクインメタリアを取り込むというのがよくわからんが、少なくとも私ではできないのでエンディミオンの生まれ変わりである衛なればこその力なのであろう。
つぎに(2)だが、メタリア衛はセーラー戦士が「禁断のアニメ技」を使っても倒せなかった。これを倒せるのはエンディミオンの剣と、そこに落ちたうさぎの涙である。つまり、うさぎと衛によって地球を滅ぼす元凶の一つであるクインメタリアを破壊しているわけだ。
問題の(3)である。あくまでも、うさぎとプリンセスセーラームーンは別人格であること、さらに(1)と(2)がクインメタリアを消滅させる唯一の方法であり、しかも衛の死によって(3)のイベントが起こるのが避けられないことであるなら、地球が滅びるのは回避できないことなのだ。決して、月野うさぎの責任ではない。逆説的だが、いったん地球を滅ぼさないとクインメタリアを消去できないのである。害虫や病気に冒された畑をいったん焼いてしまうようなものだ。
そして(4)が後始末である。さらに新しく生まれ変わった地球では、孤独だったセーラー戦士たちに友達がたくさんいるという、いわば「改良」がされている。
こう考えれば、うさぎと衛によって地球は救われているのだ。(1)→(2)のプロセスがメタリアを消滅させるためにうさぎと衛にできるたった一つのやり方であるなら、そして(3)は(2)によって起こる不可避の副作用であるなら、(1)→(2)→(3)は物語的にまったく正しい。ところがメタリア衛を倒そうとするセーラー戦士、メタリア衛を殺さなければならなかったセーラームーン、プリンセスセーラームーンを止めようとするセーラー戦士によって悲劇が演じられている。そのため、メタリア消滅から地球再生に到る過程、愛野美奈子の意志を継いでうさぎと衛が放った一発逆転のホームランが視聴者には受け入れがたい物語になっていることである。
と、愛野美奈子の考察から始まって一気に「最終回の解釈2006年版」まで書いてみた。もし来年のいまごろまで「セーラームーンの想ひ出」が続いていれば2007年版はもっと説得力のあるものになっているであろう。でも続けられるのかオレ?