「セーラーヴィーナス」愛野美奈子の蹉跌(その3)

実写版美少女戦士セーラームーンとは原作の少女マンガに東映スーパー戦隊の枠組みを当てはめて再構築した物語である。

     レッド・・・セーラームーン(元気でおっちょこちょいの主役)

     ブルー・・・セーラーマーズ(冷静沈着なリーダー)

     グリーン・・セーラージュピター(猪突猛進の戦闘員)

     ピンク・・・セーラーマーキュリー(紅一点)

最近の色とキャラクターはこのとおりではないようだが古典的な例として出してみた。act16やact36の台本を見るとわかるとおり、戦いの場を仕切るのはセーラーマーズであり、物語の進行も火野レイの目を通して進んでいくことが多い。実写版においてセーラー戦士のリーダーは疑いなくセーラーマーズなのだ。セーラームーンではない。
残念ながらセーラーマーズが登場したact3の時点では北川景子安座間美優とほとんど差がないハードボイルド演技。現在の北川景子の実力、せめてシリーズ終盤の演技力でこの回を演じたら、また監督が高○でなかったらact3〜4は別のイメージだったかも知れない。act4のこのシーン、亜美に「ひとりが恐い?」と聞かれて

     「そうなのかな。友達とか家族とかいつかきっと壊れるし(ショボーン)」

と答える北川景子の台詞回しをもっと淡々とした、けれども断定的な言い方にするべきでないか。「そうかもね。友達とか家族とかいつかきっと壊れるだろ」と話すときの抑揚と言えばわかるか。またラストシーン、

     「カラオケ抜きならいいけど」

も恥ずかしそうに言うのではなく「カラオケ抜きなら行ってやるぞ」のニュアンスを込めて、若干ふてくされながらもそれが照れ隠しを臭わせる言い方だったらどうだろう。act3〜4は、仲の良い幼い姉妹のような月野うさぎ水野亜美が、自分たちのリーダーを捜し出し、やっと見つけた火野レイを自分たちとは異質の存在と思いながらもこれからの戦いのためにリーダーとして迎え入れる話ではないか。
(つづく)