M14版「一杯のかけそば」(前編)

先日読んだ本が1989年の「一杯のかけそば」騒動に言及していた。この騒動自体はいつの時代も変わらぬ勝手に持ち上げて勝手に叩くマスコミの厚顔無恥によるものだ。実は私は「一杯のかけそば」の話しをほとんど知らなくて、この本で初めてあらすじを知ったわけである。どうでもいいけど、この話ってそんなに感動的か?この程度の話なら私の身の回りにもある。というわけで、今日から2日間はM14版「一杯のかけそば」だ。でも「かけそば」も「もりそば」も出てこない。出てくるのは「ラーメン」。主役もお母さんと息子ではなくて、お父さんと娘だ。
私の弟は小学校の先生をしている。彼が大学を出て東京の下町の小学校に赴任して3、4年目のことだったと思う。一人の女の子の母親が亡くなった。小学生にとって母親の死は大きな心のダメージになる。また、母子家庭はたいへんだが父子家庭だってたいへんなのだ。洗濯もしなければならないし飯も食わせねばならない。弟も女の子を励ましたり、お父さんと連絡を取り合ったりして気にかけていた。しばらくして、お父さんはこのままでは無理と思ったのだろう、北海道の母親つまり女の子から見ればお祖母さんの元へ行き三人で暮らすことになった。そこなら女の子の面倒はお祖母さんに見てもらい、お父さんも安心して働ける。そうして女の子は北海道の小学校に転校していった。
だが気の毒な人はいるものである。それから間もなく、今度はお祖母さんが他界してしまった。これにはお父さんもまいった。その知らせを受けた弟だが、東京と北海道では離れすぎている。手紙や電話で女の子やお父さんを励ますことしかできない。
(つづく)