タキシード仮面はなぜ正体を隠すのか(後編)

実写版美少女戦士セーラームーンでは、ダークキングダムサイドとセーラー戦士サイドに正体が露呈した段階で地場衛はタキシード仮面を廃業している。ところが、アニメ版では5年間、地場衛がタキシード仮面を続けなければならなかった。これを比較すると、実写版の特徴が見えてくる。一般の市民の存在である。
12月27日「被害者の物語」で書いたとおり実写版にはセーラー戦士の関係者以外に明確な被害者がいない。それどころかセーラー戦士やタキシード仮面の目撃者さえ、ほとんどいないのだ。なにしろセーラー戦士とタキシード仮面は

     ●市民が蜘蛛の子を散らすように逃げた後で登場

     ●市民がエナジーを吸い取られ失神している現場に登場

     ●戦いが早朝、その続きは深夜なのでもともと人がいない*1

セーラー戦士やタキシード仮面は市民とかかわりを持っていないのだ。おそらくセーラー戦士を目撃した人はact3で異空間から脱出するときにセーラーマーズに誘導された6人の巫女さんだけではないだろうか。
そう考えると、セーラー戦士とダークキングダムの戦いは「地球を守る」戦いであったにもかかわらず、一般市民にとっては「異形の者」どうしの内部抗争でしかなかったのだ。だから実写版のタキシード仮面は関係者全員に正体が割れたact25を最後に消えた。ところが、アニメ版は一般市民を巻き込んでの戦いになっているので、地場衛は一般市民に正体を隠すためにタキシード仮面であり続けなければならなかった。
実写版ではダークキングダムが一般市民に影響を及ぼしている摸写は、act45の教室のシーンくらいであろう。つらい戦いである。仲間がいるからいいものの、もし一人だったらピーター君以上に孤独な戦いになっていたはずである。なにしろ、命を賭けた戦いが市民にはまったく認知されていないのだ。セーラーVが宝石泥棒と戦っていることは誰でも知っていても、セーラームーンが納豆妖魔やサボテン妖魔と戦っていることは誰も知らないのだ。

*1:それは撮影だろ