5月から7月に読んだ本

3か月かけてやっと1回分の記事になるだけの冊数になったという。まずは寝る前に読んでいたホラー短編集。

拝み屋怪談 幽魂の蔵 (角川ホラー文庫)

拝み屋怪談 幽魂の蔵 (角川ホラー文庫)

 

 一番上は人気作家による奇妙な話のアンソロジー。お化けが出る話はほとんどないので万人にお勧めできる。つぎの2冊は拝み屋である郷内心瞳さんの最新の2冊。これで「拝み屋怪談」シリーズは打ち止めと書いてあったが、あくまでもこのシリーズが終わるのか、文筆活動を止めるのかよくわからなかった。私がいちばん好きなホラー作家なので止めないで。ところで拝み屋って本当にいるんだな。娘が友人から「親戚に拝み屋さんがいるのよ。私の友だちならタダで見てあげると言ってるので一度行ってみない」と誘われた。その人に結婚運を見てもらったら「あなたは拘りが強すぎて、結婚しても良いと思う男性は現われないでしょう」。台湾旅行に行ったとき占いをしてもらったら「あなたは自分の趣味や生き方への拘りが強いので結婚は難しいと思います」。同じ職場に「視える人」がいてその人に聞いたら「あなたはとても力強いオーラーに包まれているので変な霊が近づけない」。男も悪霊も寄せ付けない31才の娘...

逆ソクラテス (集英社文芸単行本)

逆ソクラテス (集英社文芸単行本)

 

 子どもが主人公である4つの短編。面白い会話と最後のどんでん返しは安定の伊坂節。最後はバスケットボールの話なんだが、作者に感心するのがダイナミックな動きの描写がすごく上手。バスケの試合での最後の1分間が、バスケに興味がない私にも生き生きと映像が浮かんでくる。以前に東北新幹線の中で殺し屋同士が戦うシーンがあったが、あれも見事だった。この人、一時は毎年、直木賞の候補に上がっては最後に逃すので「もう候補に入れないでください」と辞退したらしい。それでいいです。私の中では直木賞ノーベル文学賞ですから。

ざんねんな偉人伝 (新しい伝記シリーズ)

ざんねんな偉人伝 (新しい伝記シリーズ)

 

 以前に読んだ「失敗図鑑」に似ている。こちらは歴史に名を残す人、実はこんな変な人だった、実は嫌われ者だったという本。でもそのくらいの強烈な個性と意思がないと後世に伝わる偉業は達成できないよね。ここから興味を持ってその人の業績や作品に触れることができれば良いので中高生の夏休みの読書にお勧め。でも今年は夏休みが短いんだよね。7月中は涼しかったから良かったね。この機会に公立の小中高等学校へのエアコンの完備とタブレットの支給をお願いしたい。

medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

 

 このミスの1位が一昨年は「屍人荘の殺人」で、昨年がこれ。どちらも似ている。ミステリの根幹は論理の積み重ねで犯人にたどり着く正統派の推理小説だが、設定がぶっ飛んでいる。本作は霊が見えて予知ができる美少女と推理作家のコンビ。犯人は少女が名指しするが、それだけでは逮捕できないので推理作家が犯人にたどり着くためのロジックを考える。最終章に物語全体をひっくり返す大どんでん返しがある。だが...いかんせん人物描写が拙い。二人の主人公に感情移入ができないので驚愕のラストも「ふーん」で終わってしまう。次回作に期待だ。

店長がバカすぎて

店長がバカすぎて

  • 作者:早見和真
  • 発売日: 2019/07/13
  • メディア: 単行本
 

 書店員が主人公の連作短編集。おバカな店長、個性的な同僚、クセのある常連客に振り回され、折れそうになる心を、本を愛する気持ちだけでギリギリ持ちこたえている主人公が笑える、いや同情する。作者は「イノセント・デイズ」の人だね。あちらは登場人物の考えや行動が極端すぎて物語の説得力に欠けると思ったが、こちらはユーモア小説なのでその極端さが調度良い。

ショートショートの宝箱IV (光文社文庫)

ショートショートの宝箱IV (光文社文庫)

  • 発売日: 2020/05/13
  • メディア: 文庫
 

 これも寝る前に読んでいた人気作家によるショートショートのアンソロジー。最後の方の一編、オチが穴の中から声がして「おーい、出てこい」。ショートショートに興味を持っている人なら星新一は当然読んでいるでしょという前提。まちがってない。

 この期間に読んだ唯一のビジネス書。使いづらい、不便、操作を間違える、これらの製品やサービスの欠点はむしろチャンス。ここからイノベーションが生まれて、他社と差別化ができる。ただし、表層的な欠点を直すだけでなく、なぜそれが起こるのか、どういう思想でそうなってしまうのかを多角的に考え、深層にある本質にたどり着くためのノウハウが豊富な実例で書かれている。そういう仕事や立場に無い人でも楽しく読める。

・・・

今月はまた出勤が無くなったので、この記事の次回はいつなのかなあ