炎の28番勝負ー10本目・11本目「キスできる餃子」「カメラを止めるな!」

ついに10本台に入った! 28本の映画のうち、すでに公開が終わってしまった作品もあるし、観る気を無くしてしまった作品もあるので、たぶん18〜20本あたりがゴールだと思う。
     
新宿ピカデリー、客の入りは3割くらいだったよ。なにしろ主演が足立梨花、あと知っている俳優は麻生祐未浅野和之くらいのB級映画。本来なら新宿武蔵野館か角川シネマあたりで上映するのがちょうど良いのに新宿ピカデリーでやっちゃったら半分も埋まらないよ。どうしようもない亭主と別れ、子どもを連れて宇都宮の実家に戻った主人公。家の餃子屋を手伝って生計を立てようと思っていたら父親が腰を悪くして廃業していた。自分と娘のために店を再開させなければならない。父親とは結婚のときに大喧嘩をしていっさい援助が得られない。父親が作る餃子の味の記憶を頼りに主人公の奮闘が続く...秦建日子の脚本と監督なのでテンポは良い。話ができすぎのところに目をつぶれば及第点の映画だと思う。あとは足立梨花が好きかどうかだな。以前もこの人が主役の映画を観たが、彼女は映画よりバラエティ番組のが輝いているんだよなあ。


     
映画館は小さいがそれにしても満員とは。知っている俳優なんか誰もいないし宣伝もしてないし、なんでこの映画が満員になるの? 参った。参ったよ。たぶん過去に観た映画でいちばん安上がりな映画なのに、まだこんなアイデアがあるとは。先日、反体制を気取りながら文部省から援助を受けていた監督や、日本の映画人がやたらこぼす愚痴、「ハリウッドほど金がないから」。B級映画の中で見つけたキラリ☆と光る作品を観るたびに思う−「知恵を出すのに金は要らんだろうが!」。45分1カットが売りの映画が始まる。廃墟の工場でゾンビ映画を撮影している役者と監督とクルー。ところがそこに本物のゾンビが現れる。逃げ惑う役者、だが監督は叫ぶ。「これだよ、これ。このリアリティが欲しかったんだよ。このまま撮影を続けるぞ! カメラを止めるな!」。本物のゾンビが乱入した中での撮影風景、それがこの映画ね。45分1カットなのでカメラはつねに誰かを追っている。ところが所々、変な間が空いたり、同じセリフを何度もしゃべったり、どう考えても関係ないセリフが混ざったり、カメラが変な位置に固定され役者がフレームから出てしまう。きっと1カットで撮影するとこうなっちゃうのかな、見るからにB級映画からしかたないよねと思いながら見続ける。主人公以外が全員死亡してゾンビもやっつけてエンドクレジット。ここで「その1ヶ月前」とクレジットが入る。45分1カットのゾンビ映画を作る企画が持ち上がりスタッフが集められる。そんなの無理でしょと尻込みする監督。さらに監督役の役者が決まらないので監督が監督役で出演する。そして撮影が始まる...つまり最初に観たのはできあがった作品。つぎに観るのは撮影風景。だがクルーはぜんぶ役者で、この撮影風景が劇になっているわけだ。そして作品を観たときにあった変な間や、変なセリフ、それはすべて現場でトラブルが起こり、それでも1カットが売りなので役者がごまかして時間を稼いでいたんだね。タイトルの「カメラを止めるな!」には二重の意味があったわけだ。このドタバタが最高、しかも最初の違和感が氷解する面白さがある。それにしても観客の反応が早すぎる、良すぎる。そうか、満員になっているのはリピーターが多いのか。エンドクレジット、劇中作のではなく、この映画の本当のエンドクレジットでは本当のメイキング映像が流れる。劇中のスタッフの動きに比べて、本物のスタッフの動きの機敏さに感嘆したよ。劇場が明るくなって出演者の舞台挨拶。って、何人だよ、出演者のほぼ全員じゃないか。1日3回の上映を6日間続けているので計18回、すべて満員だったそうだ。この映画は新宿ピカデリーでもいいと思った。